石の壁

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石の壁

多くの国際メッセも行われるニュルンベルグのメッセセンターでは、1991年に完成
したNホール正面の壁面造形に、ドイツ、オーストリア、チェコスロバキアから計8名
の彫刻家を招き、国際コンペが行われました。天井から自然光のさし込むこの壁は、
高さ17m、幅40mで、対面の空間は会議場となっています。国際的催しに集まる
人々が多目的に利用する建物にふさわしい内壁の造形です。テーマは自由でしたが
ドイツ産の自然石を使う条件でした。
私の「石の壁」の構想は、何百億年の永い年月を経て組成される石の地層と、地球を
含む宇宙を1つの壁面に表現すると同時に、天井からの光と石の造形が織り成す影が
時間や季節により刻々と変化し、「光・時・建築空間・彫刻」の係わりを総合的にとらえ
るものでもあります。
使用した素材は、ドイツとオーストリアの国境近くで出るブルーグレー色の花崗岩を基
盤にし、その上にドイツとチェコスロバキアの国境近くから出るベージュ色の花崗岩で
7つの円盤状レリーフと1560個の円柱状の石(直径10cm、8cm、6cmで、それぞれ
厚さ4cmを550個づつ)を配置しました。直径10cmの石の上下に、直径8cmと6cm
の石を無数の星のように散りばめた帯状の構成は、大地の地層のごとく、あるいは天
の川のごとく、なだらかなカーブを描いて壁全体に5列に配置されています。
それぞれの配置の間には、直径1,25m2個、直径1.5m1個、直径2m2個、直径
2.25m1個、直径3m1個の円盤レリーフが惑星のように点在しています。5つの穴で
5大陸を象徴化した直径3m厚さ6cmのレリーフは地球を意味し、壁の中央に位置して
います。この構想の出発点は、永年の私のテーマ「Lebewesen(生き物)」のシリーズ
から現在のモチーフとなっている植物の気孔で、ミクロの世界からマクロの世界を一体
化したものです。
このような国際コンペに在独日本人の私を招待してくださり、このコンセプトを深く理解
してくださった心の広い企画者の方々に感謝すると共に、私にとっては初の壁面造形
が、世界中の人々の心の結び付きを展開させてくれるものになれば嬉しいと思います。

                         1976年よりドイツ滞在、彫刻家 加藤邦彦